ヴィック(かつら)

娘がガン治療の真っ最中、同じお部屋の12~3才前後のお年頃の娘達は、全員がツルツル頭でした。

それぞれに、バンダナに付け毛をしたり黒いお帽子をかぶってみたり

試行錯誤で毛のない頭を覆い隠しては、外出出来る日を楽しみにしていました。

でも、やっぱり毛がないって事が分かっちゃうんですよね~。



雑貨屋さんで楽しみのための、お手頃ヴィックはたくさん手に入ります。

ある日、赤毛のヴィックをおふざけで頂いた事があり

早速、ママ達がつけてみては「似合う~?」などと言い合って笑っていました。

子度達も大笑いで「Aちゃんのママ外人みた~い」ですとか

「似合う似合う!そのまま夜のお勤めいってもいいくらい!」など...



でも、いざ娘達に「つけてみたら?」と言いますと...

「そんなのいや...」と、どの子も暗い顔。

やはりちゃんと自分の黒い毛があってこそ「変身」って楽しめるんですね。

元に戻れる安心感があってこそ!っと、いったところでしょうか。



本気で「本物そっくりなカツラ」を作ろうとすると、40~50万円はざらにします。

治療費や二重生活で生活費がかさんでいる並の家庭には痛手が大きく

アートネーチャーが、社会福祉の一環で行っているリトルウイングワークスという制度を利用させて頂くことにしました。

15才以下の子供に無料でカツラを1台提供して頂けて、成長に併せて頭が大きくなって

サイズが合わなくなったら、2台目からは格安で提供してくれるのです。



体調の良い時に併せて採寸をしに来て頂けますし、2週間程まつとオーダーメイドのヴィックを届けていただけ

付け方やメンテナンスの指導もして頂けます。

ストレートパーマを少しかけたような感じの、とてもカツラとは思えないほどの良い出来なんです。

さすが、プロの技です。

お陰で外出にも気を使わず、なにしろ出掛けるときの表情が本当に明るくなりました。



お顔に傷やあざがあったり、何かの拍子に髪の毛がなくなったり

人がハタから思う程以上に、本人の悩みは大きいものなんですね。

元に戻れる安心感って、当たり前に感じていましたが幸せな事だと実感した経験です。